生物は海から発生し、長い時間をかけて人類にまで進化しました。ヒトは海から生まれたともいえます。人が生きるのに必要な元素が海中にすべてそろっているのは、生物が海から発生したことに関係すると考えられます。
海には人の食糧になる魚介類、海藻などが豊富にあります。近年、日本は世界一の長寿国になりましたが、日本人は西洋の人達と比べると肉の消費量が少なく、一方、海産物をよく食べます。このことが長寿の秘訣の一つと考えられています。ところが、若い人から徐々に食事の西洋化が進み、将来成人病が増えることが予想されているのが現状です。
最近、これら海産物から有効な物質を抽出して、若い人からお年寄りまで手軽に利用できる食品の製品化が試みられています。イワシやマグロなどからDHAという油が、牡蠣から亜鉛を多く含むエキスやカルシウム剤、カニ殻からキトサンなどがつくられています。今後はもっと海産物を簡単に利用して、日常の食生活を改善できるような工夫が必要になってくるでしょう。
日本人は世界で一番に海藻を食べる民族ですが、年々食卓から海藻が減っています。食の西洋化と海藻のもつ特有の海臭さが、若者から敬遠される原因になっているようです。しかし、海藻には野菜と違った食物繊維が豊富で、昔から健康に役立つ作用があることが知られています。コンブ、ワカメ、ヒジキ、モズクなどはすべてアルギン酸を含んでいて、血中コレステロールの低下作用、便秘の改善作用、ダイエット効果、大腸がんの予防作用が証明され、このアルギン酸の利用が注目されているのです。近い将来、このアルギン酸が強化された食品が食卓にのぼるものと思います。
アルギン酸の豊富なワカメ汁、コブ巻き、ヒジキの煮物などをもっと食卓にのせる工夫が、成人病予防につながると考え原稿を書きました。
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