日本人の食生活はこの半世紀で大きく変わりました。その象徴的な食品が牛乳です。昔は、牛乳は病気のときの栄養食で、普段の食事に牛乳や乳製品が登場することはほとんどありませんでした。今は、一人平均1日200ml以上の牛乳が消費されています。
しかし、これだけポピュラーになった牛乳ですが、必ずしもよく理解されているとはいえません。牛乳は完全食品であるから、牛乳さえ飲んでいれば栄養は大丈夫だと、過信している人がいる一方、牛乳は動物性食品でコレステロールを含むので、成人病の原因になると敬遠している人がいます。
牛乳は、人に必要な栄養素をほとんどすべて含んでいて、しかも、そのバランスが優れた完全食品と思われています。しかし、牛乳には鉄分が少ないので、飲み過ぎると貧血を招くことがあります。牛乳は完全食品とはいえないものの、牛乳ほど各種の栄養素を豊富に含む食品はほかにありません。とくに牛乳はカルシウムが多いことが最大の特徴です。
半世紀前、わが国の栄養問題は欠乏でした。今は過剰が問題で“飽食の栄養失調”という言葉が聞かれるようになりました。しかし、不足がないのではありません。それがカルシウムです。カルシウム不足は、現在の日本人にとって最大の栄養問題です。
カルシウムの一番の役割は、骨を作ることです。したがって、成長期の子どもに大切なことはいうまでもありません。他方、中高年の人にもカルシウムは重要です。今では広く知られるようになった骨粗鬆症は、カルシウムの摂取不足が一番の原因です。
日本は世界一の長寿国です。しかし、寝たきり老人100万人といわれるように、必ずしも健康で長生きとはいえない状況です。生涯の健康のためには、牛乳の上手な利用が大切なことの一つです。そのために、牛乳の理解を深めていただきたいものです。
目次
〈コラム〉乳牛が一日に出す乳量は?
第1章 若者の骨が危ない
日本人はカルシウムが足りない
骨の素材はカルシウム
成長期はキシキシ骨が伸びる?
牛乳の含有成分とその働き
牛乳のカルシウムは吸収率抜群
〈コラム〉プロスポーツ選手と牛乳
第2章 牛乳飲んで骨粗鬆症予防
老人の骨がスカスカ状態
骨粗鬆症の診断基準は?
骨折、寝たきりの原因になる
転倒、圧迫骨折にも気を付ける
中高年も牛乳でカルシウム補給
骨の育成には適度な運動も必要
牛乳でお腹が鳴る人はこうすればよい
牛乳=高コレステロールはウソ
〈コラム〉骨粗鬆症の保険ができた
第3章 牛乳なるほど講座
牛乳の種類は何で決まるの?
牛乳パックの「一括表示欄」の見方
品質保持期限と消費期限
牛乳アレルギーについて
チーズはこうして牛乳からつくられる
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