英国人にとって紅茶は日常生活に欠かせない飲み物です。早朝のモーニングティーに始まり、朝食、昼食、午後の紅茶、晩食後の一杯など、まさに紅茶がなければ夜も日も明けぬといった具合。紅茶をメインメニューにすえるティーパーティーも盛んに催されています。
それにくらべて緑茶を愛飲し続けてきた日本では、紅茶はさながら「ヨソ行き」の飲み物というイメージが強く、外出の折に喫茶店、レストランでオーダーするのが関の山。家庭で習慣として親しまれることはありませんでした。
ところがここ数年、日本で紅茶の需要が急激に上昇しました。従来のリーフティー、ティーバックはもとより、紅茶をベースとした清涼飲料水の爆発的大ヒットが発火点となって、若い人を中心に紅茶の利用が増えたのです。
こうして紅茶が注目を浴びた背景には、あくせくする毎日に“ゆとり”の時間を求め始めた人々の意識があります。それはとりもなおさず、忙しい日々に体の健康ならず、心の健康もむしばまれている生活の裏返しにほかなりません。
紅茶は気分転換に飲む、という人は多いことでしょう。その精神的効果もさすることながら、紅茶には、インフルエンザや細菌性の食中毒の改善作用など、各種症状に対して効力を備えていることが、研究者の報告で次々明らかにされてきています。気軽に利用できてしかも病気の改善や健康増進に役立つ飲料を――といった人々の要求が、紅茶の需要に結びついたと思われます。
この本を読んで、ひとりでも多く日本人の紅茶愛好者が増えることを願っています。
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