トウガラシ(唐辛子)は唐芥子とも書き、また南蛮辛子ともいいます。唐とは、もちろん中国のことで、辛子(芥子)は字の通り、カラシのように辛いことからつけられたものです。原産地は中南米とされています。コロンブスによってスペインに持ち帰られてから、ヨーロッパそして世界中に普及し、スパイスの王者にのしあがりました。現在では、多くの漬物や料理はトウガラシ抜きでは成り立ちません。
たとえば、トウガラシと聞いてすぐに連想するのが、薬味として用いる一味唐辛子や七味唐辛子でしょう。マーボ豆腐などの中華料理や韓国の漬物キムチ、日本が発明した辛子明太子もそうです。そればかりか、カレーやソース、タレなどの辛味の主体となっているのもトウガラシです。このように普段なにげなく接しているトウガラシですが、最近ではわが国で年間五千トン以上も輸入され、消費されている食品だと知れば、だれでも驚かれるに違いありません。
ところで、トウガラシの魅力はその辛味にあります。辛いといっても、品種によってマイルドなものからホットなもの、燃えるような刺激的なものまでいろいろです。私たちの味覚に刺激を与え、料理に独特の風味や薬味、食感をつけ加えてくれるので、コショウとともに、いやそれ以上に急速に世界に広がり、料理に欠かせない香辛料として不動の位置を獲得するまでになったのです。現在では、トウガラシの品種は世界で100種を超えています。
トウガラシの辛味成分は「カプサイシン」(capsaicin)と呼ばれています。この辛味成分には種々の生理活性作用があることがわかり、その面でも注目を集めています。体脂肪を燃焼させて肥満の防止、新陳代謝を良くし持久力増進、便秘を解消し美肌づくりにも役立つ、免疫賦活化で発ガン抑制にも期待がもてる……などなど、さまざまな研究報告がなされています。
現在、世界中の多くの研究機関でトウガラシやカプサイシンに関する科学的研究が進行中です。
本書では、これまでにわかったカプサイシンのさまざまな働きや作用のほか、トウガラシに関する情報や利用法など大まかにまとめてみました。トウガラシ、カプサイシンについてより理解を深め、毎日の食生活に上手に利用してもらえるきっかけになれば、著者としてこれほど嬉しいことはありません。
目次
第一章 トウガラシってどんな植物?
原産地は中南米、コロンブスが発見
呼び名や色、形も多種多彩
世界中で利用される香辛料の王様
第二章 カプサイシンの作用と効き目
辛味成分はカプサイシン
体をぽかぽか温め、血行を促進
脂肪を燃焼し、ダイエット効果
新陳代謝を促し、体力を増強
腸をととのえ便秘を解消する
エンドルフィンを大量に放出
減塩効果にも一役買っている
〈コラム〉江戸行商の唐辛子売り
第三章 トウガラシの上手な利用法
調味料として常備する
日当たりのよいところで栽培
辛くないけど効くトウガラシ
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