現代病といえば、ガンや脳・心臓疾患などを思い浮かべる方が多いと思います。たしかにこれらの疾病は、人を死に至らしめる確率の高い難病ではありますが、たとえ死に至らないまでも、同様の、あるいは、それ以上の苦痛を与える疾患も少なくありません。
たとえば、その一つが本書で取り上げているギックリ腰や変形性関節症です。なんともこわばった病名ですが、腰痛やひざの痛みなど、関節の障害といえば、身に覚えのある方は多いことでしょう。
人の体にはいくつもの関節がありますが、私たちが日常、自由に体を動かしたり、さまざまな姿勢をとれるのは、こうした関節がスムーズに機能しているからです。
よく人間の形を模したロボットをご覧になることがあると思います。あのロボットを見ると、まさに“関節”だらけといっても過言ではありません。私はロボットに関しては素人ですが、おそらくロボットの生命線は、こうした関節の機能をどう人間に近づけるかという点にあるのではないか、という推察だけはつきます。ロボットのように目には見えなくても、人体内で関節は大変重要な役割を担っているのです。
しかし、何十年もの間、毎日関節を動かしていると、軟骨の表面が擦り減ってきて、骨と骨との間のスポンジの役目を果たさなくなってしまいます。やがて痛みを生じ、腫れたり、熱を持ったり、水が溜まるなどの炎症を引き起こすことにもなります。こうした悪循環が変形性関節症の慢性化をもたらし、症状を悪化させることになるのです。
ひざ痛に代表される変形性関節症の患者は、日本国内だけで五〇万人を越えるといわれています。その周辺の人たちをも加えれば、何百万人という数字になってしまうかもしれません。その大部分が中高齢の方たちです。いわば体の老化とともに発症する頻度も高くなっています。それだけに変形性関節症は、いま急に増え出した病気というわけではありません。遠い昔から、多くの人々を悩ましてきた病気でもあるのです。
ところが、変形性関節症に対する特効薬というものは、いまだかつて見つかっていないというのが現状です。運動療法をはじめ、装具療法、理学療法、外科手術などいろいろありますが、一時的に痛みや炎症を和らげるだけで、根本的な解決には至っていないのです。
こうした状況の中で、にわかに注目され出したのがグルコサミンなのです。
私がこのグルコサミンに注目しだしたのは、海産生物資源の研究をしていたからにほかなりません。海の中には「マリンビタミン」とでも称すべき有効資源(成分)がたくさん眠っています。私が長らく携わっているDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)という魚の油が体や脳の健康に良いことはご存知の方も多いと思います。
また、カニやエビの殻から得られるキチン・キトサンという成分は、血中コレステロールを下げる健康食品の素材、人工皮膚など医療素材として多方面に応用され、世界的に注目され続けています。
本書のグルコサミンは、数多くの有効成分を含むキチン質をさらにこまかく分解して、効率よく吸収できるようにしたものです。まさに、海産生物資源から生まれたといってもいいものでしょう。
本文でも触れますが、グルコサミンはヨーロッパではすでに、医薬品としての実績を持っています。治療薬として実際に使用されてきたわけですが、このグルコサミンに、あらためてスポットライトを投げかけた研究者がいます。アメリカのジェーソン・セオドサキス博士です。
博士は、グルコサミンを変形性関節症の治療薬として使い、抜群の成果を得たと発表しました。このことが引き金になって、日本でもグルコサミンの研究、開発が本格的に行なわれるようになりました。
変形性関節症を根本から治し、また副作用もないといわれるグルコサミン。果たして、それはどのようなものなのか、以下、ご紹介したいと思います。
目次
〈コラム〉50万部のベストセラー
第一章 グルコサミンってなに?
中高齢に蔓延する関節の痛み
グルコサミンと軟骨の密接な関係
治療薬としてのグルコサミン
〈コラム〉女性は男性の三倍多い
第二章 変形性関節症を予防・改善する
変形性関節症のメカニズム
グルコサミンの生理作用
変形性関節症の治療法
グルコサミンの臨床例
コンドロイチンと併用した治療法
副作用なしに改善できる
〈コラム〉変形性関節症とリウマチ
第三章 グルコサミンの摂取量と効果
グルコサミンの摂取量
期待されるスポーツ障害への効果
肌の老化対策にも役立つ
高い安全性と効き目
第四章 グルコサミンで元気になれた
十人十色、体験者の喜びの声
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