日本でα―リポ酸のサプリメント化が可能となり、その製品が流通するようになったのは二〇〇四年以降のことですが、サプリメント大国のアメリカをはじめとする諸外国では、それ以前から人気のあるサプリメントとして広く利用されてきました。
その一番の理由としては、α―リポ酸が活性酸素の害から私たちの体を守ってくれるから、ということがあげられるでしょう。活性酸素とは、体内で発生する非常に不安定で強力な酸化力を持つ酸素のことです。その酸化力による細胞膜やDNAなどへの障害が、さまざまな生活習慣病や老化の原因となります。α―リポ酸にはこうした活性酸素を撃退する働き、つまり「抗酸化作用」が備わっているのです。
それに加え近年、注目を集めるようになってきたのがα―リポ酸の「抗糖化作用」です。抗糖化作用とは、文字通り「糖化」を抑制する作用のことですが、この糖化が糖尿病の合併症や老化など、さまざまな健康障害を引き起こすことが明らかになっているからです。糖質を主なエネルギー源としている私たちは、糖化の影響を受けざるをえません。本書では、この抗糖化作用を中心にα―リポ酸の健康効果についてご紹介します。
ところで、脂溶性のα―リポ酸の弱点、つまり吸収性の悪さからくる体内での利用率(生体利用能)の低さを改善する目的で開発されたのが、γ―CD(シクロデキストリン)により包接化された「包接α―リポ酸」です。これに使用されたのが、「R(+)―α―リポ酸」と「S(−)―α―リポ酸」を等量ずつ含むラセミ体と呼ばれるものでした。
実はラセミ体よりもR(+)―α―リポ酸“単独”のほうがより効果が大きいという幾つもの研究報告が存在するにもかかわらず、その極度の不安定性のせいでこれまで製品化できなかったのです。しかし今回、「包接R(+)―α―リポ酸」がその難問を解決したことで、初めてサプリメント化に成功し、利用できるようになったのです。
目次
〈コラム〉多方面で活用されるシクロデキストリン
第1章 生体利用能に優れる包接α―リポ酸
糖代謝に関わるα―リポ酸
ミトコンドリア中に存在
補酵素としてATPの生成に関与
補給にはサプリメントが最適
注目される二つの薬理作用
抗酸化ネットワークを構築
糖代謝促進による抗糖化作用
包接化で生体利用能が向上
生体利用能が低い脂溶性物質
吸収性と持続性が高まる
生体利用能向上のカギは胆汁酸
二種類の光学異性体が存在
R体とS体の二種類
不安定なR(+)―α―リポ酸
包接化により不安定性を解決
第2章 安定性に富む包接R(+)―α―リポ酸
包接化で光安定性が高まる
ポリマー化しやすいR体
包接体の光安定性向上を確認
包接化で熱安定性も向上する
残存率が一〇〇%に向上
完全な包接化を確認
さらに胃酸安定性も高める
胃液中でポリマーを生成
ポリマーはできず残存率一〇〇%
第3章 糖尿病やその合併症対策に役立つ
血糖値の上昇を抑制する
2型糖尿病は生活習慣病
放置すると合併症の危険が増大
R(+)―α―リポ酸が糖代謝を促進
アルツハイマー病などに有効
発症の早い神経障害
AGEsの生成や蓄積を抑制
網膜症や白内障を予防する
失明原因のトップは網膜症
原因は水晶体タンパク質の変性
腎臓の機能低下を防ぐ
糸球体の毛細血管が硬化
糖尿病が人工透析の最大原因
肌の老化防止にも力を発揮
肌のハリ、弾力を生むのは真皮
コラーゲンの弾力性が低下
動脈硬化、骨粗鬆症などの予防と改善
脳梗塞などを引き起こす動脈硬化
コラーゲンの糖化を抑制
高齢者に多い骨折やひざの痛み
骨や軟骨にも存在するコラーゲン
第4章 安全性はどうなのQ&A
R(+)―α―リポ酸の毒性は?
副作用が出る心配は?
摂取を控えたほうがよい人は?
ほかのサプリメントとの併用は?
γ―CDの安全性は?
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