うどん、そば、鍋もの、茶碗むし、天ぷら、お吸いものなど、日本料理にはシイタケの風味が欠かせません。口にした途端、思わず「うまい!」と言いたくなる、深い味わいと独特の香気は、日本人共有の“故郷の味”といっても過言ではないでしょう。
野山に自生するシイタケを日本人が食べるようになったのは、飛鳥時代以降といわれ、『医食同源』を旨とする中国から食用化が伝えられました。シイタケはその香味の素晴らしさはもとより「長寿の妙薬」として、上流階級の人々を中心に愛食されるようになったのです。つまり、食用化が始まった時点から、シイタケの薬効は知られていたわけですね。
半栽培(胞子の漂着を自然にまかせた栽培)が始まった江戸時代以降は、一般庶民の食卓にもシイタケが並ぶようになり、「風邪を引いたときは、干しシイタケのもどし汁を飲めば治る」といった民間療法が、広く行われるようになりました。もちろん当時の人々は、なぜシイタケが風邪に効くのか知る由もなかったでしょう。しかし、干しシイタケのもどし汁を飲めば確かに風邪の症状が改善されることを経験していたからこそ、親から子へと代々伝えられてきたのでした。
そうしたシイタケの効用に、西洋医学のメスが入ったのは、一九六〇年のこと。米国ミシガン大学教授のケネス・コクラン博士が、シイタケの薬理作用の研究に着手し、シイタケには強力な抗ウィルス物質が含まれていることを発見したのです。
以後、日本でも数々の研究者によってシイタケの薬効が報告され、ガンウィルスの抑制などに有効な“免疫機能を高める作用”も備えていることが明らかになりました。
この本では、そうした研究報告に基づいてシイタケの効能を紹介し、具体的にどのような症状の改善に有効であるかをわかりやすく説明してあります。
風味豊かな日本の味「シイタケ」が、食べておいしいばかりでなく、高血圧や動脈硬化などさまざまの疾患の改善に有効であることを、多くの人に知っていただければ幸いです。
目次
第1章 中国伝来「長寿の妙薬」
シイタケの風味は“東洋の味”
シイタケは豊臣秀吉の好物だった
東北地方で珍重される理由
薬効の秘密は含有成分「多糖類」
〈コラム〉シイタケの名前の由来
第2章 シイタケはこんな病気に効く
ガンウィルス抑圧に効果発揮
コレステロール排除し動脈硬化を緩和
シイタケのもどし汁が血圧降下に有効
なぜシイタケが風邪に効くのか
慢性肝炎に悩む人はシイタケを食べよう
骨粗鬆症の改善にシイタケが効く
〈コラム〉全国のシイタケ神社
第3章 シイタケの“うまい”摂取法
効果抜群!干しシイタケのもどし汁
シイタケ酒は精力アップに最適
シイタケ料理あれこれ
ゆず風味のきのこ三昧煮
シイタケと鶏ささ身のすまし汁
シイタケ選びのポイント
〈コラム〉“人工ホダ木”でシイタケ作り
おすすめのふるさと文庫