◆体脂肪の蓄積は寿命をちぢめる
私が、肥満の恐ろしさをまのあたりにしたのは、20年ほど前のことです。30代前半の若さで逝去した、友人の死がきっかけでした。
友人は、大学を卒業後、学位を取得するためアメリカへ5年間留学していました。その間の彼の食生活は肉料理中心の非常に偏ったもので、5年後に帰国したときは驚くほどの肥満体に変身していました。
それでも、帰国後は魚や野菜中心の日本食に切り替えたことで彼の体重はじょじょに減りはじめ、1年ほど経った頃にはすっかり学生時代の体型に戻り、これで健康体に戻った――と、誰もが確信した矢先、彼は突然倒れてそのまま帰らぬ人となったのです。心筋梗塞でした。
減量に成功したにも関わらず、なぜ彼は死に至ったのか。その理由は、彼のからだの内部にありました。彼のからだは、外見こそすっかりスマートになっていましたが、その内部はアメリカ留学中に蓄積した脂肪が肝臓や心臓のまわりにベットリとついたままで、いわゆる「内臓脂肪型肥満」の状態を呈していたのです。結局、それが冠状動脈の老化(動脈硬化)を進め、心筋梗塞を引き起こす結果となったのでした。
彼の死は、私たちにいくつかの重要なことを教えてくれます。まず第一に、たとえ一時でも栄養バランスの悪い食習慣を続けていると取り返しがつかないほど内臓に脂肪を貯めてしまうこと。第二に、内臓に貯まった脂肪をそのまま放置すると寿命を縮める重大因子になること。第三に、そうした内臓脂肪型の肥満を解消するには、体重を減らすことより体内に蓄積されている脂肪(体脂肪)を取りのぞくことが大切だということです。
現在の日本は、未曾有のダイエットブームにわいています。肥満を気にして減量に励む姿勢は、たいへん結構なことです。しかし、ダイエットブームの実態をつぶさにのぞいてみると、真に減量が必要な内臓脂肪型肥満の中高年者が肥満を放ったらかしにしている一方で、特にやせる必要のない若い女性が極端な食事制限を繰り返し行なっている姿が目につきます。
極端な食事制限は、体脂肪だけでなく、筋肉や内臓、骨、さらには体内の水分まで失う原因になります。その結果、無気力症、神経症、貧血、月経異常、骨粗鬆症などを引き起こし、ときには拒食症におちいって死に至るケースもあることを知っておく必要があるでしょう。
健康のためにやせたい人、あるいは美しいスリムなからだを維持したいと願う人にとっても、最大の敵は「体重」ではなく「体脂肪」です。この体脂肪をいかにすみやかに解消するかが、健康で美しく長生きするための必須条件なのです。
◆安全なダイエット食品「CLA」とは……
実はつい最近、「肥満大国」ともいうべきアメリカで、体脂肪を手軽に効率よく、しかも安全に減らす栄養補助食品が開発され、大変な話題を呼んでいます。それが本書で紹介する「CLA(共役リノール酸)」です。
CLAは植物由来の脂肪酸の一種で、私たちが日常食べている食品のなかにも微量ながら存在しています。もともとリノール酸という脂肪酸から生じる物質ですが、リノール酸とはまったく別の性質をもっていて、体脂肪を減らす効果もCLA特有のものです。
CLAは、第二章で紹介するように、(1)体脂肪を増やさない、(2)体脂肪を効率よく燃やす、(3)体脂肪を筋肉に変える――という三つの作用で、からだの中の余分な脂肪をどんどん減らしていきます。
内臓脂肪型の肥満が、先に紹介した心筋梗塞のほか、糖尿病や高血圧、がん、脳の疾患、肝臓病などさまざまな病気の誘因になることを考えれば体脂肪の解消に役立つCLAの役割はきわめて重要です。いつまでも健康で、なおかつ美しい理想のプロポーションを保つためにも、CLAの摂取は大いに役立つでしょう。
◆CLA+DHA・EPAの効用
ところで、「内臓脂肪型肥満」に加えて「高中性脂肪」「高血圧」「糖尿病」の四つの要素が揃うと、虚血性心疾患(心筋梗塞)の死亡率がきわめて高くなることが知られています。そのため、専門家のあいだではこれら四つの要素が揃った状態を「死の四重奏」と呼んでいます。
私はこれまで長いあいだ、この「死の四重奏」のうち、高中性脂肪、高血圧、糖尿病の三つの要素の予防に役立つ食品成分として、魚の脂肪酸の研究を続けてきました。DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)がそうです。
DHAやEPAの摂取が、それら三つの要素の予防にきわめて有効であり、虚血性心疾患の予防に役立つことはすでに多くの研究で立証ずみです。しかし、残念ながらDHAとEPAには、虚血性心疾患のもう一つの重大因子である内臓脂肪型肥満を直接解消する力は確認できませんでした。そうした折、アメリカで、まさにその内臓脂肪型肥満の解消に大きな力を発揮する脂肪酸、すなわちCLAが開発されたことを知ったのです。
もちろん、単に肥満を解消するだけならCLA単独の摂取で十分です。しかし、高中性脂肪、高血圧、糖尿病を併発している内臓脂肪型肥満の場合は、虚血性心疾患の発生を極力防ぐ意味で、CLAとDHAあるいはEPAを合わせて取ることをおすすめします。
目次
第1章 肥満は万病への導火線
脂肪率が高い「隠れ肥満」
肥満は貯蔵エネルギー過多
ヒップより太いウエストは要注意
こんな生活習慣が肥満を招く
肥満にともなって発生しやすい病気
無理なダイエットは逆効果に
〈コラム〉一家に一台!体脂肪計
第2章 脂肪を減らす作用に注目
アメリカで話題の新成分「CLA」
食品中のCLA量が減った理由
従来のリノール酸とはここが違う
CLAで体脂肪が2割減った
なぜCLAの摂取で体脂肪が減るのか
〈コラム〉油脂の新しい分類
第3章 こんな症状にも効果的
狭心症や心筋梗塞の危険因子を解消
がんの発生や成長を抑える効果も
こんな症状の予防にもCLAを
骨粗鬆症/関節痛/感染症
脳梗塞/糖尿病の合併症/老化
第4章 CLAに関するQ&A
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