
私たちの教室では抗アレルギー薬の新薬開発に参加するようになってすでに20数年がたち、これまでに数え切れないほどたくさんの臨床試験に私自身がたずさわってきました。現在も数社の抗アレルギー薬の臨床試験を進めているところです。
「甜茶」の臨床試験に関するお話が某社からあったのは約4年前でした。最初はお茶がアレルギーに効くはずがないという先入観をもちながら基礎実験の成果について説明を受けていました。しかしその内容を一つ一つ吟味していくと、甜茶が医薬品でなく食品であるにもかかわらずなかなかしっかりとした基礎実験が行われていたこと、そしてその結果が医薬品も顔負けするほどの成績であったこと、また薬理効果は抗ヒスタミン作用より肥満細胞からの化学物質遊離抑制作用であり、しかも消炎作用もあるというなかなかユニークな働きがあることなど、私たちアレルギー専門医としてはベリーインタレスティングな(興味深い)お茶であったこと、から臨床試験を引き受けることにいたしました。その経緯は本文に詳述します。
さて甜茶アメの印象はどうであったのか。私の印象としては、効果のないものは全く効かない、効く場合は患者さんにも効いたことがはっきり解ったし、私たちのほうにも効果のあったことがよく解りました。特に本文でも述べていますように、鼻誘発試験(鼻粘膜に抗原を付着させ、その反応をみる検査)は薬効評価における最も信頼のおける検査法でありますが、この検査で甜茶を舐めはじめてすでに2週後から有意な改善が認められ、4週後でも1%の危険率で改善をしていたことは注目に値します。アレルギー専門医がこのデーターを見れば、甜茶がアレルギー性鼻炎に有効であることを認めて頂けることは疑いの余地は全くないでしょう。
以上のようなアレルギーに効く甜茶も、エキスの量が少ないと効果が出ないのは当然のことです。私たちが実施した1日量の目安は甜茶エキスとして120mgですので、1日の摂取量が少ないのに甜茶はアレルギーに効かないと即断せず、まず容器にかかれた内容を吟味し、甜茶製品をお選びになられることをお勧め致します。甜茶はあくまで補助手段であり、お医者さんでお受けになられる治療に併行して使われるのがよい方法だと考えます。
1994年10月のアレルギー学会で発表して以来、マスコミ関係、一般市民の受ける反響は予想以上に大きなものでした。なぜ甜茶がこれほどまでに興味をもたれるのかいまだに不思議に思われてなりません。いろいろな新聞社や週刊誌、月刊誌などの雑誌社、テレビやラジオ局などあらゆるジャンルからいまだに取材が私のところにまいります。このことはいかにアレルギー病に関心をもっておられる方が多いか、この病気がいかに治りにくいか、ということを語っているものと思われます。私たちの責務の重大さを再認識しているところです。
目次
第1章 「甜茶」ってどんなお茶なの?
中国南部の“甘いお茶”甜茶
甜茶の含有成分とその作用
第2章 アレルギーのメカニズム
増えるアレルギー疾患
アレルギーにも種類がある
肥満細胞とアレルギー反応の関係
“アレルギーの実行部隊”炎症物質
第3章 アレルギー性鼻炎に甜茶が効いた
通年性アレルギー性鼻炎に対する効果
スギ花粉症に対する甜茶の効果
炎症物質の産生を抑えて効く
おすすめのふるさと文庫