いま日本では飽食を反映して、食べ過ぎと運動不足による肥満が急増しています。
肥満はまさに万病のもと。高脂血症、高血糖、高血圧を併発しやすく、これらの症状が2つ重なって起こると、心臓病を起こすリスクが健康な人のおよそ10倍に高まり、3〜4つ重複して起こると31倍に跳ね上がることから、この4疾患が揃った状態を「死の四重奏」といいます。
そこで最近、肥満大国のアメリカで新しく打ち出された医学的概念が「メタボリック・シンドローム」。これは肥満をベースに高脂血症、高血糖、高血圧が2つ以上重複して起こった病態のことで、別名「代謝症候群」「内臓脂肪症候群」とも呼ばれています。
元来、1つの病気に1つの薬を基本とする西洋の治療医学は、メタボリック・シンドロームのようないくつもの症状が重なり合った複雑な病態に対してほとんどお手上げの状態です。
一方、予防医学の御家元ともいえる中国由来の飲料に、メタボリック・シンドローム対策に役立つものがあることを、私たちは最近の研究で見いだしました。それが本書で紹介する「黒茶」です。
黒茶と聞いても、ピンとこない人が多いと思います。しかし、やせるお茶として話題のプアール茶の名はご存知の方も多いでしょう。このプアール茶は、じつは黒茶の一種なのです。
中国由来の「やせるお茶」は、科学的に効果があやしいものが多いのが実状ですが、黒茶に関しては、今回、私たちの研究グループが、動物および人を対象にした研究で確かな効果を確認しました。黒茶は、メタボリック・シンドロームのベースとなる肥満、とくに内臓脂肪型肥満の解消に大いに有効であることが明らかになったのです。
また、黒茶は、肥満にともないやすい高コレステロールの解消にも大きな効果を発揮するほか、高血糖、高血圧の解決にも役立つ可能性が示唆されています。
日本は、いうまでもなく世界一の長寿国です。しかし、平均寿命に対して健康寿命(健康で自立した生活を送れる期間)が8年も少ないことをご存じでしょうか。
つまり、日本人の多くは、最後の8年間を寝たきりなどの「要介護」の状態で過ごしているわけです。単に長生きすればよい時代は終わりました。いかに健康寿命を延ばすか、これが高齢社会(人口の14〜21%が65歳以上の高齢者)に突入した21世紀の日本の最大の課題です。
メタボリック・シンドロームの要素を一掃する黒茶のパワーは、その課題をクリアするための大きな助けになります。
毎日飽きることなく摂取できることが「予防医学的食事」の素材としてとても重要なポイント。その点、黒茶は飲みやすく、また日々の生活にすぐ取り入れることのできるすばらしい食品でもあります。
本書の内容が、一人でも多くの人の健康寿命の延長に役立つことを願っています。
目次
第1章 黒茶って黒いお茶なの?
世界のお茶は6つに分類できる
風味の違いは「発酵度」による
葉の発酵度によって6つに分類
黒茶の効果は微生物のチカラ
ウーロン茶や紅茶は内生酵素
黒茶は正統派の発酵食品
黒茶と漬物茶の違い
辺境地への「輸送茶」として普及
11世紀頃に誕生?
黒茶は偶然の産物?
一日として茶無かるべからず
これが中国の黒茶「5大産地」
主な産地とその代表的な黒茶
【雲南省】
【四川省】
【湖南省】
【湖北省】
【広西区】
黒茶の代表が「プアール茶」
皇帝への献上茶だった
古いものほど珍重される
中国での伝承的な薬効
1.酒の酔いを覚ます
2.食べ物の消化を促す
3.痰を取り去る
黒茶に含まれる有効成分
発酵過程でカテキン類は減少
発酵過程で増える成分もある
抗酸化成分「没食子酸」の効用
新成分が存在する可能性も
第2章 ダイエット+α効果を立証
メタボリック・シンドローム対策に
メタボリック・シンドロームとは
「中年太り」は要注意!
余分な脂肪が病気を招くしくみ
内臓脂肪は多方面に悪さをする
放置すると「死の四重奏」に
黒茶の摂取で「体重が減った!」
著者らの動物実験の成果
体脂肪の明らかな減少を確認
腎臓周辺の脂肪が有意に減少
別の研究でも同様の効果が
緑茶より効果が大きい
第3章 肥満にともなう病気にも
高コレステロール血症が改善
総コレステロールの上昇抑制
善玉コレステロールは上昇傾向
人の研究でも効果を立証
コレステロール低下作用のしくみ
血糖値のコントロールにも有利
黒茶サポニンを使った実験
血圧の安定に役立つ可能性も
疫学調査で成果が
こんな症状にもぜひ黒茶を
がんの予防/細菌性の下痢
〈コラム〉日本の黒茶「富山のバタバタ茶」
第4章 効果的な利用法Q&A
Q・手軽に利用できる黒茶製品を教えてください
Q・黒茶はどのような風味をもつお茶ですか?
Q・黒茶をおいしく飲むコツはありますか?
Q・黒茶の上手ないれ方を知りたいのですが?
Q・食品としての安全性は問題ないですか?
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