ダーウィンの進化論が正しいなら、地球上の生物はすべて、そのルーツをたどると海に帰着します。いわば海は、地球の生物にとって共通のふるさとといえます。
そしてその母なる海は、陸へ上がって久しい私たち人間にも、いまなおさまざまな恩恵をもたらしてくれます。本書で紹介するシールオイルもその1つです。
シールオイルとは、アザラシからとれる油のこと。テレビや水族館などで、氷上に寝転んでいるアザラシを見たことのある人は多いと思いますが、あのでっぷりとしたおなかのまわりについている皮下脂肪は、まさにシールオイルの宝庫です。
皮下脂肪というと、健康の大敵のようなイメージが強いでしょう。
しかし、それは人間の皮下脂肪であって、アザラシの皮下脂肪には当てはまりません。アザラシの皮下脂肪は、いま話題の「n―3脂肪酸」という健康成分のかたまりなのです。
私はこれまで長いあいだ、魚の油の健康効果について研究してきました。じつはこの魚油の主成分が、n―3脂肪酸。EPA・DHAはその代表ですが、アザラシも、エサで食べる魚由来のn―3脂肪酸を体内にたっぷり蓄えているのです。
しかも、アザラシは、海で生活しているものの、元をたどれば私たちと同じ哺乳類。そのせいか、n―3脂肪酸の内容が魚類と若干違っています。詳しくは本文で述べますが、シールオイルには、EPA・DHAに加えて、魚油には少ない「もう1つのn―3脂肪酸」が豊富に含まれているのです。
そうした3つの「n―3脂肪酸」をあわせもつシールオイルには、魚油を超える健康効果が期待されています。
母なる海が新たに提供してくれた、飽食の時代に欠かせないこの第3の健康油が、1人でも多くの方の健康増進に役立つことを心より願っています。
目次
まえがき―海から見つかった第3の健康油
〈コラム〉シールオイルに関するQ&A
第1章 海の恵みのn―3パワー
・イヌイットの特徴的な食生活
アザラシを主食にしている
イヌイットは血栓症が少ない
・高脂肪食でも血液さらさらの謎
脂肪は3つに分類できる
n―6とn―3のバランス
・現代人に不足しがちな「n―3」
欧米型の食生活の問題点
魚とアザラシの油はここが違う
第2章 シールオイルを徹底解明
・シールオイルって、どんな油?
タテゴトアザラシの油
人とアザラシの共存共栄
・海の脂肪酸のトリプルパワー
DPAが多いのが特徴
3つのn―3の相乗効果
〈コラム〉ハープシールにもn―3の恩恵が?
第3章 心臓と脳を守る潤滑油
・心筋梗塞と脳梗塞が起こるしくみ
動脈硬化が引きがねに
動脈硬化を促す要因
・n―3の総合力で血液さらさら
血小板の凝集能がキーワード
n―3は血小板凝集を抑える
・高コレステロール血症も改善
善玉コレステロールを増やす
九州大学で行なわれた動物実験
・血中と肝臓の中性脂肪も減少
魚油より効果的に働く
内臓脂肪を防ぐうえでも有利
・DPAのパワーはEPA以上
DPA独自の効果も
・魚ばなれの現代人に必須の油
動脈硬化はあらゆる病気の元凶
〈コラム〉魚好きのお母さんの母乳はn―3が豊富
第4章 こんな病気もすぐ撃退
・糖尿病の食事療法に最適
糖尿病が起こるしくみ
高血糖は、動脈硬化を促す
n―3が耐糖能の異常を改善
合併症の予防と改善にも
・血圧の上昇を抑える効果も
赤血球をやわらかく保つ
n−6偏重は血圧上昇を促す
シールオイルが血行を改善
・がんの発生と増殖・転移を防ぐ
過剰なn―6は発がんを促す
がんの予防効果を示す研究
がんの増殖・転移も阻止
◎体の免疫力を高める
◎がんの自殺を促す
◎がんを兵糧攻めにする
◎n―6の悪さを抑える
・子どもの知能向上にDHAが効く
健脳効果の主役はDHA
DHAで知能指数がアップ!
神経細胞の膜をやわらかく保つ
・脳の老化も最小限に抑える
残っている神経細胞を活性化
脳の働きがアップした!
・認知症に対しても大きな効果が
脳にDHAを十分に補う
高齢者施設での臨床試験
・こんな症状にもシールオイルを
【炎症性の病気】
【ストレス耐性を高める】
【視覚機能の向上】
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