シソ(紫蘇)といえば刺身のツマに、シソの実が使われます。一方で葉のほうは、お飾り色添え扱いで、パセリともども捨てられがち。なんとももったいないことです。
その“シソの葉”が最近、エキスの形でにわかに注目されてきています。シソの葉エキスがアトピー性皮膚炎症や花粉症に効く――とテレビや雑誌などで取り上げられたのです。
しかしながら、「かゆみが消えた」「鼻汁などの不快な症状が軽くなった」など、数多くの声が寄せられているせいか、シソを「薬」だと勘違いされている方が多いようです。シソの葉エキスは薬として売りに出されているのではありません。でも、よく効くことは事実。人の体にやさしく働き、さまざまな炎症・アレルギー症状に効果を発揮し、体質改善にも役立つことを、私たちは科学的に証明しています。
それは、シソの葉には私たちの体の中にある白血球の過剰な働きを抑制する力があることなどです。これらの作用が、アトピー性皮膚炎や花粉症に有効なのであり、腎臓などの疾患にも効果をあげているのです。詳しくは第二章で述べます。
ただ、シソの葉エキスは薬ではありませんので、特定の病気治療薬として使用するのではなく、薬効を助けるものとして、比較的穏やかな作用を期待することが正しいのではないかと私は考えます。
従いまして、使用される方々一人ひとりの、シソの葉についての科学的で正しい理解が必要なのです。科学的というと何やら難しそうに聞こえますが、本書ではなるたけやさしく解説したので、肩肘張らずに読んでいただければと思います。
シソの葉は、うめぼしを漬ける以外にもいろいろな利用価値があります。アトピー性皮膚炎をはじめとする疾患に役立つ可能性を秘めた、健康に有効な植物であることを、これを機に知っていただければ、研究者の一人としてこんなに嬉しいことはありません。
目次
〈コラム〉ローマ皇帝もアトピーだった
第1章 アレルギーの仕組みを探る
アレルギーは抗原抗体反応の異常?
アレルギーを起こす抗体「IgE」
炎症を引き起こす物質「TNF」
シソの葉がTNFを抑える
〈コラム〉アトピー遺伝子を解明
第2章 やさしく効くシソの葉エキス
シソの成分の特徴
急増するアトピー性皮膚炎
色々な効果が期待できるシソエキス
花粉症の諸症状を緩和する
皮膚のトラブル全般に効果あり
解熱作用もあり傷の治療にも期待
腎臓病に有効な“利尿作用”
シソの解毒作用
シソ科のスパイスが効く
シソの葉エキスの作り方
シソクリームでかゆみからサヨナラ
〈コラム〉シソの新種を発見
第3章 シソ栽培を楽しむ
鉢植えで手軽に挑戦
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