新発見“食べる絹”

化粧品・バイオ素材にも注目されるシルク

平林 潔 著 1995.04.26 発行
ISBN 4-89295-347-4 C2177 文庫サイズ 48ページ 定価 275円(本体 250円)

発想の転換が生んだ“食べる絹”

新発見“食べる絹”

 昔から絹は衣料素材として絹織物を作るのに用いられてきました。ところが洋風化に伴う和服の減少とシルキー合繊(新合繊)の開発によって、日本の絹は見るも哀れな衰退の道を辿っています。ポリエステルを主流とする新合繊は絹の何万分の一のフィラメントを作ることに成功し、絹以上の絹ができたと豪語しています。
 従来、旅館や料理店、和風レストランの女子従業員の制服は絹の和服と相場が決まっていました。ところがいまや新合繊の和服にとって替わろうとしています。数十万円もする正絹に比べて値段がはるかに安いうえ、丈夫で長持ちし、洗濯もでき、扱いやすいからです。
 こうなれば絹でなければ駄目だという物でなければ、これからの絹の生きる道は峻しいと思います。すなわち、絹でなくてはならないものとは、「絹健康グッズ」です。
 人間の究極の願いは長寿にあります。健康で長生きできればこれほど幸せなことはありません。絹はこの健康と大いに関係があります。絹は人体を構成する全てのアミノ酸を含み、皮膚を構成するコラーゲンと親戚です。絹肌着、絹靴下、絹化粧品など肌に密着させて使えば、絹のおだやかな吸湿・放湿性、紫外線カット性および抗菌性があるので、絶えざる外界からの有害な刺激から身を守ることができます。
 また、消化されやすい形で“絹を食べれ”ば、その構成アミノ酸の機能性から成人病の予防にもなります。食品用絹は、絹衣料にはならない、はぶかれた屑絹を使えばよいので、安価なうえ、絹のリサイクルにもなり、かつまた地球浄化のためにも一役買うことになります。
 本小冊子が、絹を見直すいいきっかけになってくれれば、研究者として嬉しく思います。


目次


    まえがき―発想の転換が生んだ“食べる絹”
    〈コラム〉桑の葉と桑の実

第一章 食べる絹の誕生
   ・絹ってほんとうに食べられるの
      絹(シルク)入り食品登場
      日本唯一の工学系絹学科
   ・食品化の第一歩は絹ゼリー
      減少し続ける絹生産
      冷蔵庫を開けてみたら
      「繭の里」で試食
   ・屑絹の再利用がそもそものきっかけ
      一日一〇〇sもでる「屑絹」
      実験装置を京都に運ぶ
   ・急速に進んだ絹食品開発
      シルクアミノ酸醤油?
      甘みの秘密はアミノ酸

第二章 食べる絹の薬理作用
   ・絹のアミノ酸組成
      栄養学的に価値ある絹のアミノ酸
      マスコミで大反響
   ・血中アルコールを下げる
      アルコール代謝に効果がある
      アラニンが分解サイクルを活性化
   ・血中コレステロール濃度の上昇抑制
      フィブロインが効いた
   ・血糖値を抑制する絹オリゴペプチド
      ラット実験で血糖値低下
      インスリンの分泌を促す
    〈コラム〉絹ごし豆腐

第三章 絹食品化への化学的闘い
   ・絹を溶かしてゲル状にする
      絹フィブロイン
      水素結合を切る
      絹溶液の作り方
      クエン酸でゲル化促進
   ・溶解は塩化カルシウムが一番
      コストの問題も解決
   ・絹のお粥で消化率アップ
      絹の消化
      オリゴペプチド粉末がトップ
      シルク醤油から食塩を取り除く
      濃縮して乾燥させる
   ・臭いや黄褐色の問題も解消
      活性炭で脱色する
      「酵素法」で解決

第四章 多方面に活用される絹
   ・バイオ素材として注目株
      バイオ素材としての絹
      分子量で用途が決まる
   ・化粧品や入浴商品にも添加されている
      コラーゲンを活性化する
      絹の成形物
   ・フィルムから装飾品への応用
      絹のシート
      肌を荒らさない絹フィルム
      絹は和服によく似合う
    〈コラム〉シルクロード


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