各種アミノ酸の働き

タンパク質をつくり医療にも貢献している基礎栄養

内藤 博 著 1999.04.24 発行
ISBN 4-89295-396-2 C2177 文庫サイズ 48ページ 定価 275円(本体 250円)

アミノ酸は健康なからだの基本

各種アミノ酸の働き

 多くの人は「アミノ酸」という名称を聞いたことがあると思いますが、それがどんなものか説明できる人は少ないようです。その理由には、アミノ酸はコレステロールやカルシウムなどと異なり、1種類ではなく、単に「アミノ」という化学性の部分を持つ「酸」の総称であり、およそ20種の主要なアミノ酸以外にも、天然には数十種がある、といった漠然としたものだからでしょう。
 例えば、酢の本体は酢酸という酸ですが、これに「アミノ」が付くと「グリシン(アミノ酢酸)」という甘味の強いアミノ酸になり、全く性質が変わってしまいます。
 よく言われるように、脂肪は肥満になる、コレステロールは動脈硬化になりやすい物質と、わかりやすく説明できます。しかしアミノ酸については、そのようにひと口で健康上の有益性、有害性をうたいあげることは難しいのです。
 アミノ酸同様、「脂肪」や「食物繊維」も、互いに似た性質を持つ物質類の総称です。そして、脂肪は摂りすぎると肥満になりやすく、食物繊維は腸の中でいろいろな有害物質と結合して吸収を妨げることはよく知られています。また、1日数mgあれば充分な「ビタミン」も、互いに違った種類の物質類の総称ですが、体の中で作られないため、食物から補給しなければ欠乏になります。この点では、アミノ酸と共通しています。
 しかし、アミノ酸がこれらとも違っている特徴は、20数種の性質の異なった種類のものが結合した形の「タンパク質」として、多種多様な特性を発揮していることです。
 日本人の1日のタンパク質(良質)必要量は、20歳代男子が70g、女子で60gほどとされ、成長期では10〜20g増と考えられますが、現在のわれわれの食生活でタンパク質が不足している心配はまずないといえます。ただ、人間はエネルギーの不足に対しては、お腹が空くという本能に従って食べることを始めますが、タンパク質が不足するというシグナルには比較的鈍感なため、注意が必要となります。
 また、タンパク質の栄養効果は短期ではなく長い間に現れるということも、よく自覚しておかなければなりません。この数十年間に青少年の背が伸びて、体格もよくなったのは、なんといっても良質の(アミノ酸バランスの優れた)タンパク質をよく摂ってきたことによるものです。
 本書では、タンパク質とアミノ酸についての基礎知識をわかりやすく解説したつもりですが、日常の健康管理に参考として頂ければ幸いと思います。


目次


    まえがき―アミノ酸は健康なからだの基本

第1章 アミノ酸はタンパク質の骨組み
   ・家の「柱」に相当する「タテの構造
      タンパク質の摂取はアミノ酸の補給
      アミノ酸の組み合せが体を構成
      20種類の結合順序の違い
      わずか1個の違いが大きな変化に
   ・家の「梁」に相当する「ヨコの結合」
      アミノ酸の三次構造が多様な作用を
      パーマのウエーブもアミノ酸結合の変化
      折り畳みと、ほぐれ
      立体構造と結合の切断
   ・新しいものと入れ替るターンオーバー
      成分が元と全く同じタンパク質をつくる
      加齢と共に合成バランスが崩れる
   ・必須アミノ酸が大切な理由
      体内でつくられないアミノ酸
      最も低い必須アミノ酸の比率
      100が理想的
      不足のアミノ酸を添加する
      食事の組み合せでスコアは上がる

第2章 アミノ酸の生理作用が役立つ
   ・医療に貢献しているアミノ酸食
      タンパク質とアミノ酸混合物の違い
      アミノ酸輸液が効果発揮
      症状に合わせたアミノ酸比率で効果
      アミノ酸混合液を使う理由
   ・個々のアミノ酸の性質の違い
      特殊な生理作用を発揮する
       【リジン】
       【メチオニン】
       【システイン】
       【トリプトファン】
   ・アミノ酸にはD型とL型がある
      光とアミノ酸の関係
      天然と化学合成の違い

第3章 ペプチドの生理活性作用
   ・アミノ酸より大きくタンパク質より小さい
      ペプチドとは
      食べたタンパク質からできる
   ・食品由来のペプチド類が効果
      血圧を下げる
      鎮痛効果
      免疫作用
      カルシウムの吸収性を高める
      コレステロールを排出
      食べ物からと化学処理からの区別も
   ・食生活を豊かにするペプチド類
      栄養以外の価値もある
      アミノ酸よりペプチドの吸収性がよい
      ペプチド輸液

第4章 タンパク質の摂り方
   ・1日必要量の決め方=バランス法
      質はもちろん量も大切
      運動量によって必要量は増えるか?
      どのくらい食べても安全か?
      必須アミノ酸の栄養価値を第一に
      タンパク質食品という意味



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