カキ(牡蠣)は栄養素の宝庫です。必須アミノ酸八種をそなえる良質のタンパク質、豊富なビタミン群とミネラル分など、わたしたちが生きていくうえで欠かせない成分が、バランスよく含まれています。
海は母なり──とよくいわれますが、その海の有効成分を丸ごと凝縮して身肉に抱えこんだカキは、わたしたちにとって母乳のごとき栄養価値をそなえた食品といってよいでしょう。
東洋医学では、カキの薬効はすでに二〇〇〇年以上も前から注目し、さまざまな疾患の治療薬として使われてきました。民間レベルでも、かなり昔から、カキの強壮作用や婦人病への有効性などについて、口コミで広く知れわたっていたようです。
一方、食物の効用を軽視しがちな西洋医学の見地でも、カキの効能は戦前から認められていました。ストレプトマイシン(抗生物質の一つ)が開発されるまで、結核の特効薬としてカキが利用されていたことは、ご存じの方も多いでしょう。そのほか、貧血や夜尿症、肝臓病の治療食にも用いられてきました。
本著では、そうしたカキの有効性を、最新の研究データに基づきながら、化学的に解き明かしていきます。
カキが世界中で愛食され続けてきた理由のひとつは、もちろんカキの「おいしさ」にあります。それに加えて「体に良い食品」でもあるということを、個々人が自分の体で実感してきた側面も大きく影響しているでしょう。
たとえば、カキを好んで食べたとされるシーザーやビスマルクなど英雄たちの、カキ食に対する執着ぶりがそれを物語っています。
本文で後述しますが、カキを一度に一〇〇個以上食べたとか、カキを手に入れるために戦争を仕掛けたとか、たかが「おいしい」だけの食べ物なら、これほど熱を上げるはずがありません。
そこには「おいしさ」以上のプラスαがあったわけです。
みなさんの中にも、カキのプラスαをすでに実体験した方が多いでしょう。今さら「カキが精力アップに効く」といっても、驚く人はいないかもしれません。ですが、カキの有効性は実感済みとしても、なぜその有効性が得られるのかを知ることは重要です。
この本を読んでカキ食の効能のメカニズムを知り、ますますカキを好きになっていただければ幸いに思います。
目次
第一章 世界中で愛食される牡蠣
栄養価満点「海のミルク」
世界の英雄に愛されてきたカキ
漢方では二〇〇〇年前から薬効に注目
〈コラム〉カキを食べると頭がよくなる?
第2章 理想的な栄養バランス食
野口英世も注目したグリコーゲン
必須アミノ酸八種の「良質タンパク質」
ミネラルとビタミンがたっぷり
第3章 カキ食で慢性疾患を解消
肝臓の疾患にはカキ食が最適
血中コレステロール値を下げる
神経系統のトラブル解消に
精力増強を望むならカキが一番!
女性に優しいカキの有効性
糖尿病はカキ食で亜鉛を補給
狭心症の発症を予防する
寝汗、味覚障害、胃酸過多にも
第4章 おいしいカキを食べる法
冬から春にかけてが食べごろ
カキの買いかた選びかた
カキを上手に調理するポイント
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