ショウガ(生姜)は、ニンニクやワサビとともに、なじみ深い薬味根菜の一つです。お寿司には薄切りのガリとして、お弁当には細切りの紅ショウガ、焼き魚には芽ショウガ、そして冷や奴におろしショウガ……と、食に彩りを添えてくれます。また、体調の改善にも役立っています。
生姜湯に顔しかめけり風邪の神
虚子
昔の方はよくご存じでしょうが、子供のころ暑い日盛りに、よく「あめ湯」を飲まされたものです。最近では、暑いときには冷たいものを飲みますが、昔は熱い「あめ湯」が暑さをしのぐ飲み物でした。この「あめ湯」の中にショウガが入っていて、「生姜湯」ともいいました。ショウガの根をおろしてアメをまぜ、湯にといたものですが、暑気払いになるとともに、発汗を促し、「カゼ薬」としても重宝されました。
高浜虚子(俳人・一八七四―一九五九年)が、顔しかめけり風邪の神、と詠んだのもうなずけます。
ショウガは日本に渡来したもっとも古い野菜の一つです。どこの家庭にも、いつでも常備されている材料ですが、あまりにも身近にありすぎるためか、その効用についてはかならずしも理解されているとはいえないようです。
しかし、昔の人はショウガの効用をいち早く見抜いていました。食欲を増進させる妙薬、健胃作用のある胃薬として用いられると同時に、殺菌作用を利用して生ものにショウガを添えて、腐敗やにおいをも防いできました。
医学が進歩して、こうした庶民の知恵は科学的にも裏づけられています。ショウガのさまざまな効果の秘密は、ショウガの辛味成分であるジンゲロン、ショウガオール、ジンゲロールなどにあることがすでに分かっています。私たちはこのショウガの辛味成分の「ジンゲロール」に着目し、そのガンに対する効果を実験で確かめました。すると予想どおり、大腸ガンを抑える見事な作用が確認されました。昔から優れているといわれてきた食品は、さまざまな形で私たちの健康を守っているのです。
昔から薬や香辛料として親しまれてきたショウガ――。本書では、ショウガの歴史や成分、特徴、効用のほか民間療法や調理法までもふれました。この冊子がショウガの素晴らしさを見直してもらえるきっかけになれば、著者として嬉しい限りです。
目次
第一章 ショウガは古来の健康食品
インドなど熱帯アジアが原産
さまざまなショウガの種類
ショウガの成分特性
第二章 ショウガの辛味成分が効く
漢方にも広く用いられる
食欲を増進し、消化をよくする
体を温め、冷えをとる
発汗を促し、新陳代謝をよくする
血圧を正常に近づける
〈コラム〉世界一の男とショウガエキス
第三章 大腸ガンからおなかを守る
日本でも大腸ガンが増えている
大腸ガンを抑えるショウガ成分
ラットの実験で分かったこと
〈コラム〉ショウガとミョウガ
第四章 ショウガの上手な利用法
ショウガの選び方、保存法
ショウガを使った民間療法
調理・料理へ上手に活用
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