
◆食と健康……なぜ食べ物にこだわるのか
現代ほど人々が「健康」に気を配っている時代はないでしょう。いろんな生活習慣病(成人病)が多発し、それが食生活の乱れに起因していることが指摘されてきて、健康な食べ方に関心が集まってきているのです。そのため、一度健康によいという情報が流れると、過剰に反応して盲目的に食べようとする傾向が見られます。
人間の食生活は、まさに一つの「文化」であって、食の楽しみを奪ってまで食生活を縛ることには、多くの人が強い抵抗を示します。それで、健康によいとの情報に飛びつくことになるわけです。
◆昔から健康によいといわれている食べ物の価値
そういった話題の食べ物の中に、本当に健康によいものはどういったものなのか、きっちりと判断できる審査眼を身につけることが大切です。最近では栄養学や食品学の進歩はめざましく、情報が乱れ飛んでいます。その中から正しい情報を的確に選び、把握し、実践することは容易なことではありません。有効性と同時に安全性も確かでなければいけません。その意味で、昔から健康によいと言われてきた食品はまず安全であり、その中にはなにか「優れもの」が含まれている可能性があります。
◆ゴマは健康食品の代表
そのような食品の代表の一つが「ゴマ」(胡麻)です。ただ、ゴマは健康によいとは思っていても、なぜかということになると何千年もの間、明らかではありませんでした。最近になって、京都大学の清水先生らによる微生物を用いた実験で、ゴマの中には大変強力な有効成分が存在することが明らかにされ、その後の研究で有効成分は普通の摂取量で十分期待できる量が含まれていることもわかってきました。まさに、「開けゴマ!」です。
ゴマの代表的な有効成分が「リグナン」とよばれる一群の成分です。リグナンは植物中に含まれる少量成分で、それぞれの植物で特徴的な生理活性を示すことが知られていますが、ゴマにはリグナンが他の植物では見られないくらい非常に多く含まれ、中にはゴマにだけ含まれているような成分もあります。
ゴマの多様な機能性について、リグナン成分を中心に、私たちの研究成果をまじえ、わかりやすく説明したいと思います。この小冊子を読まれれば、ゴマが機能性成分の宝庫であることが改めて理解され、毎日の食事に積極的にゴマを取り入れることが健康への近道の一つであることをわかっていただけるでしょう。
目次
第1章 ゴマは小粒でも優れもの
体にいい安全な伝統食品
油分に富む種子の代表格
ゴマに特徴的な成分リグナン
〈コラム〉「ごまかす」はゴマの滓?
第2章 注目されるセサミンの機能性
リノール酸の代謝を調節する
酸化を抑え、脂肪酸の燃焼を促進する
悪玉コレステロール濃度を下げる
脂肪依存性の癌を予防する
肥満を防止し、血圧を下げる
アレルギー反応を抑える
老化を抑制し寿命をのばす
肝臓の機能を活発にする
そのほか広範な働きも
第3章 ゴマの賢い摂取法
有効摂取量と安全性
和え物や油、添加食品から摂る
大量生産で利用しやすく!
他の食品成分との併用メリット
〈コラム〉「ごまをする」のも楽じゃない
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